Medical essay

整形外科病棟M&A3



早くもクリスマス


  11月中旬、ニュースなどでは各地でクリスマスツリーの
点灯式などが伝えられています。他人事と思っていたら、
病院のロビーにも病棟の談話室にもクリスマスツリーが飾られました。
これから他病棟、リハビリ室などあちらこちらで見られるようです。


    


  暫くの間、日曜日には午前と午後にグランドピアノの自動演奏も行われる。
12月にはクリスマスコンサート、キャンドルサービスなど
楽しみもありますが、あゆみみどりも出来ることなら
クリスマスは自宅でと願っていますがどんなものでしょう。



リハビリの日々


  リハビリが日々の日課となって、
指導者は徐々にきつく現実に即したものへと、
そのメニューをグレードアップさせている。
最初に比べると大分その中身も変わってきた。


                


横歩き・・・まるで蟹が歩いているように横に歩くだけなのだが、
片足を上げたときに体重がそのままかかるのでかなりきつい。
そばで見ていると何でもないような動作がいざ自分でやってみると大変なのである。
階段・・・手すりがあれば比較的楽なのだが、
手すりに掴まらないで登ったり降りたりすると、
後になってぐったりと疲れが出てくる。
あゆみは腰痛のため腰に湿布を貼りどうにか耐えているが、
退院したらどうなるのだろうと心配になってくる。
もしかしたら整骨院通いが日課になるかもしれない。




5人部屋・あれこれ


  あゆみは、最初5人部屋に入院、その後諸々の事情もあり個室、
みどりと一緒だった2人部屋、そして5人部屋といくつかの部屋に
変わってきた。大勢の部屋も大人の集団生活なので、
それなりの楽しさも味わえる。勉強になることも多い。
今の部屋に移動してから楽しい時間を過ごしていたのだが・・・
入院してくるのは常識的な人ばかりではない。
いたわりの言葉のなさ、わがままな自分本位の言動に時に
イライラして疲れてくる。今までならリハビリの後など、
早く部屋に帰ってのんびりと手足を伸ばすのが日課だったのだが、
部屋に帰ることさえ辛いときもある。
あのおばさんが個室に移ってくれたら・・・部屋の皆がどれだけ楽になるか
・・・・正直な気持ちだ!!


                 

  あゆみは、談話室が一番落ち着く場所になった。
そこに置かれている本を読みながら、時間の過ぎるのを待つ。
自分のベッドがあるのになんと寂しいことだろう。
早く退院したい!!妙なファイトが沸いてくるのだった。




車椅子よさらば


  あゆみは3ヶ月の間車椅子のお世話になった。
創外固定ということもあってやや大きめの車椅子を借り、
側面を外してもらい乗り降りし易いように改造して歩けない期間を
乗り越えてきた。

  リハビリの流れの中で歩行器、松葉杖と歩く時間が多くなってきた。
あればやっぱり頼ってしまうだろうからと、
思い切って車椅子は卒業することにした。長い間ありがとう!!
  

   


  みどりは3月の入院時も車椅子を借りていた。
退院後も出先で車椅子を見つけるとホッとしたものだった。
6月に入院するときに知人に「何か欲しい物は?」と聞かれて、
とっさに「車椅子!!」と答えていた。
あの頃は、とにかく歩くのが辛かった。
あれから5ヶ月、最近では少しの距離なら杖を持たなくても
歩けるようになってきている。なんと感謝したら良いのだろう。
これからは歩く距離を延ばさなくては、
私の足となってか活躍してくれた車椅子に感謝をして返却します。
本当に長い間ありがとう!!


 一句  小春日に さよなら告げる 車椅子    みどり




告白


 1階のロビーに病院に対しての意見と、その回答の張り出してある
掲示板がある。どんな内容かと目を留めてみたら・・・・        
・診察の際、患者の名前を呼ぶときにはフルネームで呼ばないで欲しい。
・ロビーが寒いので何とかして欲しい。
・廊下の絵が暗い色調で気持ちが暗くなる。
・職員のあいさつや接遇に冷たさを感じるときがある。(リハビリ科)
・病室の金庫を少し大きいものにして欲しい。
・外来の車椅子が壊れているものばかりだった。
・各部署への謝辞


            

回答・・・
・本人確認が大切なので現状のままフルネーム対応させていただきます。

・調査の結果問題はないということなので、気温設定は現状を
 維持させていただきます。

・現在「公開ギャラリー」と称して地元画家らの作品を
 本館1階に展示するように改めました。
 今後も定期的に入れ替えを行っていく予定です。

・リハビリ中は担当患者様から目を離すことは危険であり、
 一方顔を上げずにあいさつするのは大変失礼 になります。
 こうした実情をご理解願うとともに、
 支障のない範囲での接遇の改善に努めていきます。

・今年中に金庫を一回り大きいものに変更する予定です。

・直ちに点検しましたが異常は認められませんでした。
 車椅子の点検(タイヤ・ブレーキ等)は、
 毎日行い不具合はすぐに修理対応しています。

 上記の項目の中のひとつ・・・
あゆみみどりの会話の中から日頃感じていることを、
意見として投書したのはみどりです。




近づく師走


  あゆみはまもなく入院5ヶ月目、みどりは6ヶ月目。
あゆみはここ数日、のリハビリで驚くほどの成果をあげている。
担当医から「どうですか?」との質問に、
「このままいけば12月初旬には退院出来そうな気配になってきました。」と、
答えられるようにまでなってきた。

  何と言っても自宅に帰って普段の生活に戻す努力が一番の
リハビリになるだろう。4階までの昇り降り、部屋の階段の昇り降り、
どちらも環境を変えられない以上自分が体力をつけて
生活をするしかないと思うと、元気にもなれる。


                  


  みどりの方も、採血の検査結果も良好で、
傷の処置も毎日から週2回となり気分も明るくなってきている。
ただ長いことベッドでの生活が続いていることもあり、
外の寒さを実感できないでいる。感じるとすれば、
この間まで飛び回っていたトンボの姿がなかなか見られなくなってきたこと。
近くの学校を囲む樹木が、色づいてきて晩秋を感じさせる風情に
なってきていること。
そして窓から冬鳥が編隊を組んで飛んでいる姿をよく見かける
ことが多くなってきた。おそらくユリカモメやカルガモたちだろう。
やはりは病院の外にはもう冬が来ている。




空き部屋多し


  「南向きより、あなた向き・・・個室・2人・5人部屋!!」
こんなキャッチフレーズが思い浮かびました。最近、
退院する患者が多く空ベッドが目立つようになって、
病棟の採算が合うのかと心配です。

  救急患者はともかく、計画して手術をする人は、
農繁期や年末のあわただしい時期は避けるのでしょう。
夏の頃は満室状態で、看護師から退院を促される患者さんも
見受けられました。

  どの職種でも猫の手を借りたいほど忙しい時期もあれば、
一段落できる時期もあるので、病棟の医師や看護師も多少息を
抜ける時期があっても良いのかもしれません。


                


  みどりの心配をよそに、翌日には数人の入院があり
瞬く間に空きベッドは減りました。
今日は大安で退院の方も何人かいるようですが、
週末にはまた数人の患者が入院してくることでしょう。
半年近くも入院していると、その時々によって病棟内の入院患者が多い少ない、
股関節の患者が多い、腱板や脱臼の患者が多いとか
気付くようになってきます。
看護師の話によると、年末は大掃除などで怪我し救急での
入院が増えるそうです。
年末だから特別でなく日頃からの生活が大切なのかもしれません。




行く人・来る人


 あゆみの退院が12月10日(大安)と決まった。
若い女性がいつまでも病院で過ごすのも辛いことだろう。
あと1週間、体力をいっぱい付けて元気に退院して欲しい。
一時期寝食を共にしたあゆみが退院していくのはとても寂しいが、
笑顔で見送ってあげよう。


             


  みどりはそう思うと同時に次は絶対私の番と自分に言って聞かせた。
 一方で、友人がリュウマチで変形した足の指の手術のために、
再入院してきた。年に2回の入院は主婦にとっては一大事、
ぜひとも完治して自由に歩けるようになって欲しいと願うばかり。
みどりも、3月の1ヶ月間の入院と合わせると、
一年の半分以上をベッドで過ごしていることになる。
長い人生こんな年も必要だと割り切れば、貴重な体験をさせてもらっている。 





右から左へ


 右手の中指がちょっと短いということでの不便さが色々ある。
まずお箸をきちんと持てない。タオルなどを絞るときに力が入らない。
杖を持つときに力が入らない。碁石が掴めない。
これからも何かの折に不自由さを感じることが出てくることだろう。
みどりはリハビリの時間に左手でお箸を持つ指導を受けているが、
肩に力が入ってなかなか簡単には行かない。
お箸の練習をしながら気付いたのは、
親指、人差し指、中指を使って動かしているのは箸の1本だけ、
もう1本はじっとしている。
何故今までこんなことに気付かなかったのだろう。
日本人が豊かな感性を持っているのは、
機能性豊かな箸をきちんと使いこなせるからだろう、
きっと脳にも刺激を与えているに違いない。


               


  碁石も左手で持つ練習をしているが、落としたりして
まだまだ碁盤の上に綺麗に石を置いていける自信はない、
これを機会に右脳の眠っていた才能が目を覚まし、
飛躍的に碁が強くなったら・・・などと夢みている。
きっと才能のないものに限ってこんな非現実的なことを考えるのだろう。




聞きなれた言葉


 みどりは一年近くも休職しているが、最近の防衛省関連の
ニュースを見るたびに仕事を思い出すようになった。
「随意契約」略して「隋契・ずいけい」一般の人は
耳にしてもあまり気にもとめない言葉だが、
入札の仕事に関わっていたみどりは、入札、汚職、談合などと言う
言葉を耳にするとついテレビの画面に目が行ってしまう。


  今の防衛省が防衛庁だった頃、さいたま新都心にある防衛庁の
会議室に何度か指名入札の仕事で行ったことがある。
数百万円の仕事でさえも、国の機関らしくとても堅苦しい雰囲気の中で
札が行われていた。民間とに癒着が起こらないようにと、
事務所内への出入りはとても厳しいものだった。


                


  現場である百里航空自衛隊は、
入り口で車検証、免許証のチェックも厳しく、面談相手への確認を取らないと
中には入れてもらえない。若い自衛官は忠実に仕事をこなしていた。
どの世界でも同じことだがきちんと仕事をこなす人が大勢いるなかで、
一部の人たちが役職の上にあぐらをかいている姿を
なくすには大変なことなのだろう。

  
 
  入札・・・にゅうさつ
   争入札のこと。売買・請負契約において最も有利な条件を締結
 するために複数の契約希望者に見積額を書いた文章を提出させて
 契約者を決める競争入札の方法。主として国や地方公共団体など
 の公共機関などが行うことが多い。競争入札には一般競争入札と
 指名競争入札がある。入札によらずに契約を行うことを随意契約
 という。 

   国の契約は原則として一般競争によらなければならない。
 (会計法第二十九条の三第一項)
 指名競争入札及び随意契約は法に定められた場合のみに行う
 ことが出来る。(会計法第二十九条の三第三項、第4項及び五項)






ついに・・・・


 みどりの主治医から、長いこと待ち焦がれた
【退院】の言葉がついに出ました。
入院も180日を越えると、入院料が上がってしまうそうです。
そんなことも踏まえて、退院に向けてのスケジュールが出来上がりました。

12月14日主治医の処置をしてから退院、それまでは毎日点滴。
12月15日から内服に切り替え、週2回の通院。
その後は経過を見ながら、場合によっては再入院もありうるという
条件付の退院です。


          


 いよいよ退院、170日の入院生活の間に季節は、
梅雨、夏、秋、初冬、いくつも季節が過ぎていきました。
特にみどりのような膠原病の患者にとって、一番の心配なのは寒さ、
内科の主治医から「今年は早いうちから寒さが厳しいので
膠原病の患者さんは大変ですよ。」と、言われてしまった。
かといって暖かくなるまで入院生活を続ける訳にもいかないし、
今年の春先に、寒さに負けて1ヶ月の入院をした経緯があるので
本当に気を付けなければなりません。




180日を越える入院に係る「保険外併用療養費」について

   厚生大臣が定めるところにより、180日を越えて入院されている
患者様の入院料が一部保険給付から外され、
特別の料金が徴収出来る制度となりました。
これにより当院では下記の金額を請求させて頂いております。

1日につき2,000円






【退院おめでとう!!】


 12月10日・大安、入院日数134日、あゆみの退院である。
本当におめでとう!!ご主人もご家族もこれで一安心されることだろう。
全治6ヶ月、目の前が真っ暗になるような出来事だったに違いない。
きちんと歩くことが出来るようになるか、そのことも心配だったことだろう。


           


  みどりが、車椅子に乗っているあゆみの姿を始めてみたとき、
足の付け根だか、お腹だか解らないけれど金属の棒が
突き出ていてちょっと異様な光景に驚いたことを思い出す。
それが創外固定だったということを知ったのは、
一緒の部屋になってからのこと。本人はさぞかし不安だったろうし、
入院生活も不便だったことだろう。
3ヶ月近くも寝返りをすることも出来ず過ごしていた。
それなのに、あの明るさは天性のものなのだろう。
彼女がいるところは、病室も、リハビリ室も、談話室も
どこも明るさに満ち溢れていた。これからはご主人とともに、
以前のような生活と体力づくりに励んでもらいたい。
マラソンや、トライアスロンに参加するのが希望らしいが、
願わくば、母になって赤ちゃんを抱く姿を見てみたい。お元気で!




時間はあったのに


  振り返れば時間はたっぷりあったのに、 
とうとう退院が近づいてしまいました。
みどりは物書きには向いていないようです、
日々の出来事をそのまま書く日記程度が限界でした。


11月の運勢で文章を書いて応募すると運が開けると助言をもらい、
チャレンジしてみようとその気になりましたが、
とうとう締め切りが過ぎてしまいました。
賞金100万円囲碁マンガの原作募集、
登場人物を設定して大まかなあらすじまでは進みました。
その後、原稿用紙数枚分のところで立ち止まったまま
時間切れ負けと言った感じです。


            


  囲碁の話なら基礎はきちんと習ったけれど強くはない、
ちょうどみどり程度の棋力のものが書いた方が、
わかり易くて良いかもしれないと思ったのですが・・・
創作分野は向いてなかったようです。
これから私が左手に石を持ち替えて、ドンドン強くなっていったら、
それこそ楽しい話が書けるかもしれません。書くのはそれからにしましょう。

暖かくなったら、今までのように公民館で子供達や
初心者の方々と9路盤や13路盤での対局が楽しめるように
なれればとればと思います。





嬉しさと、淋しさと


 半年の間お世話になった看護師の何人かが、
明日は会えないからと挨拶に来てくれた、別れの言葉はやはり淋しい。
袖触れ合うも他生の縁・・・日々接していただいた皆さんとのことを
思い出すと、退院の嬉しさと淋しさが交錯する。


            


  リハビリで作った、ペーパークラフトのネコは主治医に、
クリスマスツリーはしばらく入院生活が続く友人にプレゼント。
部屋の中を少し片付けていたら娘達が手伝いに来てくれた。
まとめた荷物がなくなると、病室の中が妙に殺風景で
ますます淋しく感じられる。

昼に、あゆみさんががリハビリ帰りに立ち寄ってくれた。
自宅は疲れるけれどやっぱり一番いいと元気そうだった。
長期療養生活が続いたので、今までの仕事への復帰は
難しいかもしれないとも語っていた。
来週からは2人とも2回の通院があるので、会えるチャンスあるだろう。


いよいよ、みどりの整形外科病棟での生活も最終のページ、
辛かったこと、淋しかったこと、嬉しかったこと、多くの人たちのとの
出会いと別れがあった。ちょっと殺風景になってしまったが
【M&Aの部屋】と名づけたこの部屋で過ごすのもあと僅か、
明日傷の処置をして点滴が終わればいよいよ退院です。
 
退院の日の担当看護師は、
私の半年間担当として何かと世話になった男性看護師、
今日のスケジュールを打ち合わせで、
点滴の終了後・・・昼前に退院することを確認。


                

主治医の処置を受け・・・
「根気強くがんばりましたね。」
「来週からは週二回の通院があります。
しばらく続きますがもう少し頑張ってください。」
「先生にも、看護師の皆さんにも大変お世話になりました。 
これからは外来でお世話になります。」

看護師の皆さん方がさんざん苦労した点滴も、
最後は見事に1回で血管に、
終わりよければすべて良しということで入院生活の締めくくりです。

 170日ぶりの退院、外に出ると身の引き締まるような寒さに包まれました。




それぞれの手に


 交通事故で全治6ヶ月のあゆみと、膠原病で6ヶ月入院の二人が、
偶然一緒の部屋で過ごした期間を、つたない文章で綴った
Medical essay【整形外科病棟M&A】も、二人の退院ともに完結です。

印刷をして、あゆみ、そしてそれぞれの主治医へ、
手渡すばかりとなりました。
果たしてそれぞれがどんな顔をして読んでくれるか楽しみ半分、
不安半分と言ったところです。


           


 件名・大変お待たせいたしました。
 本文あゆみさん、お元気ですか?【整形外科病棟M&A】が完成しました!
久しぶりに元気な顔も見たいし、ご都合の良い時間等をご連絡ください。
・・・みどりより。

 送信


        

         完



参考


MRSAの概要
 (Methicillin-resistant Staphylococcusaurus;MRSA) 
MRSAは黄色ブドウ球菌が耐性化した病原菌
(メチシリン耐性ブドウ球菌)であり、黄色ブドウ球菌と
同様に常在菌のひとつと考えられ、健康な人の鼻腔、
咽頭、皮膚などから検出されることがある。

  そもそも薬剤耐性菌であるため薬剤の使用が多い病院で
見られることが多く(耐性菌は抗生物質の乱用により
出現すると言われている)入院中の患者に発症する
院内感染の起炎菌としてとらえられている。
しかし、病原性は黄色ブドウ球菌と同等で、
健康な人にも皮膚、軟部組織感染症などを起こしえる。

  病院以外での発症が最初に確認されたのは
1960年代にさかのぼるが、近年では健康な人の
ごく一般的な人のごく一般的な感染症の起炎菌として
見つかることもあり、本菌が病院から街中へと
広がっていることが示唆されている。

 MRSAによる膿瘍、院内で感染すると、
免疫力の低下した患者では通常は本菌が
おこすことはないような日和見感染をおこすこともある。
一旦発症するとほどんとの抗生物質が効かないため
治療は困難であり、難治性感染症からの
転帰をたどる場合もある。

  特に術後の創部感染、骨感染(骨髄炎)
感染性心内膜炎(IE)、臓器膿瘍は難治性化し、
適切な治療を受けられないと、
後遺症ばかりか死の転帰をたどる事になる。

  院内で感染者が判明した場合、
感染者の治療も重要であるが、
感染を広げないことも重要であり、
標準予防対策に基づく適切な感染管理が必要となる。

  MRSAの場合、接触感染予防策が適用である。
代表的な治療薬はバイコマイシン、テイコプラニン、
アルベカシン、である。2006年4月、リネゾリドが
新薬として承認された。菌種(クローン)によっては、
ミノサイクリン、クリンダマイシン、スルファメトキゾール、
トリメトプリム、スルファメトキサゾール、トリメトプリムなどが、
有効か中等度有効であることがある。

  「抗菌薬使用のガイドライン」では、バイコマイシン、
アルベカシンを第一選択薬とし、
効果が得られなかった場合などにテイコプラニン、
リネゾリドを使用するよう推奨されている。
また、国内では適応がとれていないが、
欧米ではキヌプリスチン、ダルホプリスチン(シナシッド(R))も有効であることが証明されている。

  バイコマイシンは耐性菌の出現が少ない抗菌薬として
MRSAの治療に汎用されていた。
しかし2005年現在、バイコマイシン耐性腸球菌(VRE)や
バイコマイシン耐性ブドウ球菌(VRSA)の出現が
報告されていることから、その使用には十分な
注意が必要とされている。
さらにβ―ラクタム薬との併用によってバイコマイシン耐性が
発現するMRSAも出現している。
これはbeta-Iactamantibiotic induced 
 vancomycin-resistant MRSA(BIVR)と呼ばれており、

  併用には注意が必要である。要約すると次のとおりとなる。
●多剤耐性の黄色ブドウ球菌である。
●病院内で見つかることが多いが、
  最近は街中でも感染を起こしている、
●ほどんとの抗生物質が効かないため、
  感染症難治性である。
●病院内で感染が判明した場合、
  感染の伝播を防ぐことが重要である。
●バイコマイシン、テイコプラニン、アルベカシンが
  抗MRSA薬として認可されている。
●リネゾリドが新薬として承認された。(2006・04) 
●80%エタノールが消毒薬として有効である。
  (エタノール消毒は芽胞を持たない細菌に有効)

  ※日和見感染・・・普段は病原性がないかあっても
毒性の弱い微生物が、宿主の免疫力が低下したときに
感染症を引き起こすこと。







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